臓器移植法案は慎重審議を!
明日から臓器移植法改正案が参議院で審議に入る。
臓器移植法改正案は、26日に参院本会議で審議入りする。今のところ、衆院を通過したA案と参院有志による対案の2法案で議論が展開されそうだ。ただ、脳死を「一般的な人の死」とするA案への支持には濃淡があり、審議は「A案VS参院有志案」という単純な構図にはとどまらない可能性もある。A案の修正を巡って議論が混とんとする事態も予想される中、成立前に衆院が解散されれば廃案となる事情も絡み、審議の行方は見通せない。
【鈴木直】毎日新聞
解散含みの政局で審議を尽くせるのかどうか落ち着かないこと甚だしい審議入りですが、尻に火が付いている衆議院とは違うのでじっくり審議してもらいたい。もっとも、衆議院が解散されればその時点で廃案となるのですが。
現行法では臓器提供の意思表示をしている人を除いて脳死判定をされることはなかったのだが、A案の下では臓器提供を拒否していない限り家族の同意の下で脳死判定をされるので、脳死状態に陥った人にとっては環境が180度変わることになる。そもそも今まではドナーカード(臓器提供であれ拒否であれ)を所持している人はほとんどいないので、年に数例しか脳死判定にまでいたる人いなかったが、これからは拒否していない限り臓器提供候補者に自動的に組み入れられ家族が判断を迫られることになる。
ほとんどの人はドナーカードなんて持っていないだろうから、脳死状態に陥ったら生殺与奪の権は家族にゆだねられる。ところで家族って誰の事よ? 親兄弟かい?女房子供かい?相思相愛の夫婦だろうか?離婚寸前の夫婦だろうか?金持ちか?貧乏人か? 自分の運命を左右する人を自分で選ぶことも出来ないというのも釈然としない。
本人も釈然としていないが、任される方だって大変だ。前総理安倍晋三氏がKYとバッシングされたように日本人は「空気を読むこと」を他人に課し、自らに課しがちな民族なのでその辺の影響も心配だ。まさか臓器移植コーディネーターがドアの外で判断をせかすなんて事はないと思うが、「誰々ちゃんを救おう!」なんて報道のなかで判断を迫られるとしたら、冷静に判断できるものではない。まして治療に当たっている医師が臓器移植に好意的であったら、家族が感じる空気は大きくバイアスがかかったものとなる。 そもそも臓器移植法とは臓器移植を推進するためのものだというのだから家族の判断には常に「臓器提供に応じるべし」という圧力がかかると考えるべきだろう。
それに臓器移植を最新の究極的な治療法のように称揚するのには賛成しかねる。私は免疫抑制剤を常用していかなければならない臓器移植そのものに懐疑的だけれど、今のところ臓器移植しか手がない場合を認めるとしても「移植さえ受ければ助かる」というほど明快でもない。そうした例を最近目にしたばかりである。手術を受けて亡くなった一己ちゃんには気の毒だけれど記事を引用させていただく。
一己ちゃん亡くなる 米で心臓移植 術後1カ月、経過不良
北海道新聞 (06/23 12:15、06/23 14:16 更新)米国で心臓移植を受けた、横浜市の自衛官山保幸己(さんぽこうき)さん(32)=十勝管内豊頃町出身=の長男一己(いっき)ちゃん(1歳3カ月)の支援団体「いっきちゃんを救う会」(同市)に入った連絡によると、一己ちゃんは23日午前5時20分(日本時間)、肺出血のため、入院先の米国カリフォルニア州のロマリンダ大学病院で亡くなった。
一己ちゃんは昨年、特発性拡張型心筋症と分かり、助かるには心臓移植しかないと診断された。国内では15歳未満からの脳死での臓器提供を認めていないため4月に渡米し、5月23日に移植手術を受けた。極度に弱った状態だったため術後の経過がおもわしくなく、集中治療室(ICU)で治療を続けていた。
同会や、日本での入院先の昭和大横浜市北部病院の主治医によると、移植手術後に硬膜下血腫で緊急手術を受けたほか、肺や腎臓、移植した心臓の働きが弱く、再移植の必要性も指摘されていた。
同会の藤本義人代表は「とても残念です。多くの支援にお礼申し上げます」。豊頃町の一己ちゃんの祖父山保登さん(57)は「一己は小さな体でよく頑張りました。募金に協力してくれた北海道のみなさんに感謝します」と話した。
1歳3ヶ月の小さな体にメスを入れるなどいうことは普通の親にはとても受け入れがたいはずだ、しかも他人の臓器と入れ替えるなどというのは耐え難いものだと思う。しかしそれにも関わらず決断したのは一重に「移植をしなければ助からない」そして「移植さえ出来れば生きながらえれる」と信じたからだろう。しかし結果は無惨なものであり、同時に、激しく同情し1億数千万円の寄付を集めた人たちの期待をも裏切った。これらの人たちの感情の折り合いはどのようにつけられるのだろうか? とりわけ両親はどういう感情に向き合って生きていくことになるのだろうか?
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