北朝鮮が25日に2回目の核実験をした。前回は不完全と言われていた核爆発が今回は地震波の大きさから判断して完成させてきた見込みが強い。ミサイル実験も継続しているので急いで核保有国としての体裁を整えつつあることを認識しなければならない。
「許し難い暴挙」と非難してみても彼らは核保有国への歩みを止めることはないだろう。しかし「理解しがたい行動をする国」と言ってすましていることは出来ない。今後は安保理で新しい決議を採択する方向に進むのだろうが、それによってどうした事態が引き起こされるのかを見極める必要がある。
まず、北朝鮮の行動が「理解しがたい」ままでは如何にもまずい。経済援助狙いの瀬戸際政策というのが一番ポピュラーな見方だと思うが、援助する方だってそんなにお人好しではないし、援助される方もそれが分からないほど馬鹿ではない。イヤ、だから理解しがたいと言うのでしょうが、別の角度から見てみると見えてくることもある。日本人の場合はとりわけ拉致された家族達の憎しみから距離を置いてみることが必要だ。
何度か書いてきたところですが、北朝鮮は「アメリカが恐ろしくて仕方がない」のだと言うことが大事です。「ならず者国家」と言われるほどには強力ではない。南北統一を目指して自分から仕掛けた戦争とはいえ朝鮮戦争で一度は破滅の瀬戸際まで追い詰められた国であり、アメリカによって核兵器の使用を現実に検討された国でもある。そして現在も飢え死にしそうな国民を抱え、駐韓米軍と非武装地帯を挟んで対峙し、海側から日本の自衛隊と米軍によって包囲されているちっぽけな国だ。こうした恐怖感が「強盛大国」だとか「先軍政治」だとかの馬鹿げた大言壮語の陰にあると言うことを知らなければならない。
私たち日本人は60数年前にアメリカと戦い、国土を焼け野原にされ、広島と長崎に核爆弾を実際に使われた国民なのですが、占領政策が余程巧妙だった為か、日本の政治家の飼い慣らしに成功したためか、実質的に占領が続いているにもかかわらずアメリカを憎いとも、怖いとも思わない国民となってしまっている。広島と長崎に原爆を落としたアメリカをはじめとする核大国の安保理常任理事国と一緒になって、核実験をした北朝鮮を一所懸命非難するというのは考えてみると不思議な図だ。
オバマ大統領はプラハで「核兵器のない世界を目指す」との演説を行った。画期的なことだと思うし、実現してほしい理想だとは思うが、その論理はそんなに簡単に受け入れられるものではないと思う。何よりこの主張をする国が散々核兵器をつくり配備してきた国であり、散々他国に軍事介入を繰り返してきた国であるからだ。大国同士がお互いに破滅しないように、管理しやすいように核兵器と運搬手段を減らしていくことは良いでしょう。しかしこれは次の核拡散を防ぐ為の行動に対する正当性の補強の意味が強いのだと思う。散々勝手をしてきた国が、他国に核開発の停止を強制していくためにはそれくらいのことはしなければ格好がつかないと言うことだ。--ちょっと皮肉が過ぎたかもしれませんが、プラハ演説の肝は核兵器の廃絶の方にあるのではなく、核拡散をどうやって防いでいくかの方にあると見ます。オバマはプラハでの演説で次のように言っています。
核実験の世界規模での禁止のため、私の政権は、直ちにかつ強力に、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を目指す。50年以上の協議を経た今、核実験はいよいよ禁止される時だ。
核兵器に必要な材料を遮断するため、米国は、核兵器用の核分裂性物質の生産を検証可能な方法で禁止する新条約(カットオフ条約)を目指す。核兵器の拡散を本気で止めようとするなら、核兵器級に特化した物質生産に終止符を打つべきだ。
次に、我々は核不拡散条約(NPT)を強化する。国際的な査察を強化するために(国際原子力機関〈IAEA〉に)さらなる資源と権限が必要だ。規則を破ったり、理由なくNPTから脱退しようとしたりする国に、すぐに実のある措置をとる必要がある。民生用原子力協力のため、国際的な核燃料バンクを含む、新たな枠組みを作り、核拡散の危険を増すことなしに原子力利用ができるようすべきだ。 (朝日新聞)
と、力強く言うのですが、ここには平和的利用を認めたNPT体制ではインドもパキスタンもイランだって北朝鮮だって核保有することを止めることが出来なかったし、出来ないというアメリカの苦境が滲み出ている。そうした平和利用に限定した燃料の枠組みが出来ることは好ましいとは思うけれど、燃料供給を大国に依存することの危険をどう考えるかという問題もある。信用されるような行動を過去にとってきたかと言うことを自分の胸に聞いてみれば分かると思うけど・・・。そもそもCTBTはアメリカをはじめとする核保有国がどこも批准して来なかったのだから、せめて「批准してから言いなさい」ってところだろう。
アメリカが「核兵器の先制使用をしない」宣言というのをしているのだから安心して核開発を止めなさいと言う議論がある。国際関係のなかでは日本は比較的約束を守るし、アメリカに対する警戒感も薄いのでこうした宣言を高く評価する傾向にあるが、この議論は世界標準ではないだろう。宣言はその国の意思に依存するもので何時又撤回されるか分かったものではないのだ。相手に頼り切っている国のなかだけで通じる議論だ。
北朝鮮が自分達のアメリカに対する恐怖感から核開発を進めてきたというのは理解できる。イラクのフセイン大統領の末路を見せつけられれば尚更だ。しかし、それにしても最近の行動は性急すぎて慎重さを欠いている。これでは中国を苦況に追い込むだけで良い結果は得られないと思う。それにオバマを甘く見るのは危険だ。核拡散防止の決意を世界の前で宣言した事が米朝二国間の交渉に応じるという方針を採りにくくする面がある。つまり強硬姿勢に転じる恐れが常にあると言うことだ。韓国、中国、ロシアが国境を接しているので、いきなり軍事行動と言うことは考えにくいが、甘いカードは切りにくくなっているのが現状だ。PSI(大量破壊兵器拡散防止構想)による臨検から暴発という自体も考えられなくはない。アメリカは真珠湾攻撃の時のように先に戦端を開かせておいて報復攻撃に持って行くというのが得意だから、中国の黙認があればやりかねないと言うことぐらいは考えておくべきだ。
それにしても、強硬カードの出し合いで戦争なんて言う事態はお互い避けるべきだ。日本政府にも慎重に行動してもらいたい。
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